スマホの辞書登録でマジック・スペル(呪文)を登録した
僕よりも先に嫁いだ妹は、ちょっと鬱気味で後ろ向きな発言が多い。口癖が「ゴメン」。
その妹から、遊びに行ってもいいかとLINEが来た。娘がイヤイヤ期に突入してストレスが溜まっている様子。いつでもいいぞと伝えたら、やっぱり最後に「ゴメンね」の文字。兄貴の家に遊びに来るのにゴメンてことがあるか。
余計な気遣いもつまらん遠慮も無用だ。妻も楽しみにしている、と返信。
妻もどちらかというと後ろ向きな性格で、ストレスを溜め込んでは、たまに爆発させている。ゴハン作れなくてゴメン、こんなお弁当ですみません、おやつ食べちゃったゴメン、ゴメンゴメンゴメン。
「前向きに考えろ」と言うのは簡単だけど、そんなの無理だよね、という。
俺様は一族の中でもぶっちぎりで強いので、お前ら妻子弟妹のようなか弱き存在が束になって頼ってきたところでびくともしない。エンリョなく頼れ。ただ、困ったことに俺様はあまりにも強大すぎて、周りの者がへばってしまいそうでも気づかないことが多いので、察してくれとかいうのはナシだ。しんどい時は自己申告してくれ。
さて、頼れと言ったばかりだが、多少は自分で自分の身を守れるようにならねばならない。幸い、偉大なるお前らの兄/夫は、男ばかりの学校を卒業し、そのまま仕事に明け暮れていた挙句、魔法使いにジョブチェンジした経験がある。……意味はわからなくてよい。とにかく、魔法界の一端を担ったことのある俺様が、現代に受け継がれる魔法の言葉(マジック・スペル)のひとつを伝授してやろう。
「ありがとう」
か弱き存在であるお前らでも使える簡単なマジック・スペルだ。自分も相手も少しだけ幸せな気分になる効果がある。できれば口角をあげて、少し明るめの声で、普段話す時よりも気持ちゆっくりめで唱える方がいいな。なお、対象物は人間でなくてもいい。相手が人間なら、目を見て唱えろ。効果が違う。
MPが減ることはほとんどないからバンバン使え。日常的に使うことで、効果は大きく、そして長続きするようになる。ゴメンと言いたくなったら唱えるがいい。
とはいえ、口癖を直すのはなかなか難しい。ありがたいことにこいつは、文字で伝えるだけで発動する万能スペルだ。LINEやメールで送る前に、「ゴメン」を「ありがとう」に書き換えてみろ。……いいこと考えた。
「ごめん」と入力したら「ありがとう!」と変換するように、スマホの辞書に登録してしまえ。
大丈夫だ。本当にごめんと書かねばならぬことは、そんなに多くない。たぶん。
(ところで、仕事用のPCで「呪文」と打ったら予測変換で「呪文発動速度」って出てきて驚いた。メジャーな言葉なのかな?)