スズメバチが助手席に座った
助手席に座ったのは、女の子だったと信じたい。
高校生のころ、自転車通学していて首筋にバチン！と何かがぶつかった。何気なく手に取ったらアシナガバチ。慌てて離して難を逃れたという思い出がある。が、今回はもっと凶悪なやつだった。
窓を開けて運転中、「バチン！」という音がしたので目をやると、スズメバチが助手席にいた。血の気が引いた。
スズメバチは、方向を確かめるかのようにその場でくるくると回っている。ぶつかった衝撃で目が回っていただけかもしれないけど、ハラハラしながら何とか路肩に車を停めた。運転中に飛ばれたら危なかったかもしれない。
で、こいつにお帰りいただかないといけないのだけれど、蚊すらうまく叩けず手を痛めるような僕が、下手に攻撃して一撃で倒せなかったらかえって危険。というか賭けてもいい。絶対失敗する。
どうしたもんだろうと悩むこと数秒。ちなみに冷静なように読めるかもしれないけど、実は車内にいたので気が気じゃない。交通量が多くて降りたくてもドアを開けられなかったのだ。
と、置いてあったトートバッグを登り始めた彼女。たぶんこれ、一番上までたどり着いたら飛ぶよね？そのために登ってるよね？こえええええええ！！とっさにバッグだけ窓の外に出し、裏からバシバシ叩く。まだいる！バシバシ！…まだいる！！バシバシバシ！
何度か繰り返すうちに、姿が消えていた。
っていうことがありましたとさ。すごく怖かったです。あのオレンジと黒のシマシマってなんであんなに怖いんだろう。
